Webディレクターの現場の声

私がWebディレクターになって学んだこと、その他心に映りゆく由無し事 …などを、そこはかとなく書き綴ります。

脱・犬の道:イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな本質」

 書評2回目は私が社会人になってから読んだ本で、特に役に立ったと感じた1冊です。

 

著者 :安宅和人
発行所:英治出版
発行日:2010年12月11日第1版発行

 

こんな方にオススメ!!

  • 同期入社に差をつけたい入社2~3年目くらいまでの新社会人
  • 企画書の作成スピードを上げたい人
  • コンサルタント的な論理的思考を身につけたい人

 

本書の概要

著者の安宅さんは経営コンサルティング会社マッキンゼーでコンサルタントとして勤め、その後米国のイェール大学で脳科学について学び、帰国後は日本のヤフーに転職という経歴。

コンサルタント、脳研究者という経験から会得された、生産性を圧倒的に高める物事の考え方、問題可決の方法について記されています。

タイトルにあるイシューとは

「2つ以上の集団の間で決着のついていない問題」であり「根本に関わる、もしくは白黒がはっきりしていない問題」の両方の条件を満たすものがイシューとなる

 と、著者は定義されています。

企画や課題、問題について考えるとき、それらの解決策について頭を悩ますことに時間をかける人が多いですが、その前にあなたを悩ませているその問題は本当に解決する価値がありますか?

そもそも、今目の前にある問題が適切か、間違っていないか、そこから疑っていくことをスタートにする(イシューからはじめる)ことで価値のある結果をハイスピードで叩き出すことができるようになりますよ、という内容が書かれています。

 

フジテレビ版の旧HUNTER×HUTERアニメオリジナルエピソード軍艦島の『城から逃げるのではなく、城ごと逃げる』的な解決すべき問題の本質を掴み、最短距離でゴールへ行きましょう、という感じです。

 

犬の道から抜け出す方法

仕事をしていると、日々、解決しなければならない無数の問題に追われることになるかと思います。

その際、一心不乱に大量の仕事をこなし、知的生産性を高めず根性に逃げることを本書では『犬の道』と呼んでいます。

この犬の道を避けるには

  1. イシュー度が高い問題に取り組み
  2. 解の質(イシューに対してどこまで明確に答えを出せるかの度合)を高める

上記の2点を満たした仕事を(本書ではバリューのある仕事と呼んでいます)を優先的に経験していくことで圧倒的な生産性を得ることができるのです。

 

犬の道を行く根性に逃げる人は労働者(拘束時間に対して給料をもらっている)。

真のビジネスパーソンとは労働時間に関わらず仕事の成果に対しての報酬をもらっている人のことを指すのです。

 

確かに多くの経験を積めばある程度の実力はつくかと思います。

しかし、「新人はまず量をこなすべきだ」こういう考え方の人に対して本書は

うさぎ跳びを繰り返してもイチロー選手にはなれない。「正しい問題」に集中した、「正しい訓練」が成長に向けたカギになる。

と、返しています。

 

回転数とスピードを重視する

本書では上記犬の道を抜け出すべく思考方法について様々なフレームワークや分析方法が紹介されています。

その中でも、特に私が実際の仕事で活用し有用だと感じたのが

停滞を引き起こす要因として、最初に挙げられるのが「丁寧にやり過ぎる」ことだ。(中略)「60%の完成度の分析を70%にする」ためにはそれまでの倍の時間がかかる。(中略)一方で、60%の完成度の状態で再度はじめから見直し、もう一度検証のサイクルを回すことで、「80%の完成度にする半分の時間」で「80%を超える完成度」に到達する。単に丁寧にやっていると、スピードだけでなく完成度まで落ちてしまうのだ。

私自身Webディレクターとして企画書を作成することがよくありましたが、特にこの一つの資料を完成させるまでの回転数を上げるということが実践で一番役に立ちました。

…第1回目のレビューで見切り発車のPDCAサイクルを嘆いていた気もしますが、個人の作業として行う場合はこの方法はとても有効です。

 

その他、個人的な感想

この手の本は読者によって、あう・あわないがあるかと思います。

本書は私がまさに犬の道に踏み込んでいた時に出会い、本書に倣って自分の作業を改善したところ、目覚ましい成果を出すことができたため愛読の一冊となりました。

 

他にもマッキンゼー出身の方が書かれたビジネス書を何冊か読みましたが、問題解決の方法について書かれた本は、切り口は違えど、どれも本書と似通った内容になっています(「空・傘・雨」「フェルミ推定」「MECE」「チャートの書き方」等)。

本書がそれらの元祖というわけではないのですが、読んでいて一番自分にしっくりきた本がこの「イシューからはじめよ」でした。

 

ビジネス書というのは先達が長い時間をかけて手に入れた奥義を一般向けに公開してくれているもので、この『素直に受け入れらる』かどうかで本の効果が大きく違ってくるかと思います。

 

余談ですが、ページ上部の本書の画像は真っ白な表紙に黒い文字でタイトルが書かれていますが、実際に本屋さんに並んでいる本は表紙の半分近くまで高さのある黒い帯がついています。

縦に白と黒半々のデザインなのですが、最近このレイアウトの表紙の本をよく見かける気がします。何かの流行なのでしょうか…

 

//以上